短編①

冬の凛とした空気の中
「私はやはりあの子が嫌いだ。」とついには口に出してみることにした。
自動販売機にはあたたかいの表示が増えたが私は全然あたたかくない。冷たくなりたいわけではないのだ、いつだってニコニコしているような私はいつからかどこか遠くに行ってしまった。

思えば最初から馬が合わなかった。
大人になればなるほど、嫌いな人間とは関わらなくていいようになっていく。しかしどうしようもなく切れない場所もある。

決まってそういう場面で学ぶことが多いことは、短くない人生の中で数少ないわかったことの一つだ。だがしんどい。ああしんどい。口に出すとより強くなりそうな感情を頭に浮かべては掻き消すように頭を横に振った。

いつのまにか私は息を止めていて、誰かの呼吸の音が聞こえた。それは草木、虫かもしれないし、星かもしれなかった。ただ、人間のものではないことが心地よかった。

「っはああ」と息を吐き出してゆっくりと吸い込んだ。こんな時でも星は綺麗だし距離は遠くて近い。
きっと距離が近すぎただけなのだ。現にこうやって物理的な距離を取るだけで心は大分に落ち着いた。

距離感は私にとってとても大切なことなのに時間の共有こそが解決だと思い込んでしまうことがある。
ゆっくり生きよう。
もう一度深呼吸をした。

Aメロにもならない

あか Mez-zo-forute gtvo

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